■
以下は書きかけ霊咲の続きから抜粋です。
「よければ灯りを、消さないでもいい?」 「それ、は……」 きっと普段ならすぐに拒んでしまう筈の要求。けれど霊夢の側から望んで引き出した要求であるだけに、せっか く咲夜が口にしてくれた願いを無下にしてしまうことは、どうしても躊躇われてしまって。数瞬の逡巡のあと、観 念したように霊夢は頷いて咲夜の望みを頷いて受け入れた。 もともと置行灯だけしか灯していない部屋はさして明るいわけでもないのだけれど、灯りを残した儘でするのは 初めてのことで。一度は首を縦に振っているとはいえ、すぐに後悔の気持ちさえ霊夢の心には湧き出てきてしまう。 「……幻滅しても、知らないから」 溜息混じりに口にした言葉。けれど、そんな霊夢の言葉にも、くくっと軽く笑ってみせて。 「そんな簡単に諦められるなら、苦労しないわ」 咲夜がそう言ってくれる。そのことが、堪らなく霊夢には嬉しかった。 愛されている。そう信じられるだけの信頼を、いつも咲夜は惜しみなく与えてくれていて。そんな咲夜にだから こそ、霊夢もまた同じだけの信頼で応えたいと思うのだった。――明るい中で裸になることは頼りなく、そして何 より恥ずかしいこと。それでも、咲夜の為になら応えたいと思うから。 「……お願い」 自分で脱ぐ勇気はなくて。霊夢がそう一言だけ漏らすと、咲夜も察したように頷いてくれた。 冷たい指先が肩に軽く触れ、幾度も霊夢の肌を擦るように撫でていく。咲夜は霊夢が自分から服を脱ぐことより、 脱がしてしまうことを好むものだから、こうして彼女の指先に衣服を剥がれていくことには慣れているつもりだっ たのに。ただ部屋の明るさひとつが違うだけで、いつもは意識せずにいられる不安めいた恥ずかしさを、否応無し に心に突きつけられているかのようだった。 いつも以上に慣れた手つきで、咲夜はあっさりと霊夢の拠るべきものを奪い取ってしまって。部屋に漂う冷たい 空気との接点が増えるたび、霊夢は頭がかぁーっと熱くなるような心地さえ覚えてしまう。お腹が露になって、乳 房さえも露にさせられて。……その上、乳房以上に恥ずかしい陰部さえも露にさせられてしまうと、もう目を開け ていることもできなくなってしまった。 「隠さないで」 「で、でも……」 「駄目」 囁く声で咎められてしまえば、些細な抵抗さえすぐに叶わなくなる。 さらに恥部を覆い隠す手のひらを、仕方なく下ろした刹那には。 「……あぅ……」 奇妙な感覚があって、思わず霊夢そんな声さえ漏らしてしまう。 僅かにさえ意識できない時間の隙間のうちに。霊夢の両腕は背中に回され、柔らかな布か何かで括り縛られてし まっていた。 「……そういう趣味があったの?」 時間を操る程度の能力。弾りあう際にはこれでもかと見せつけられる能力を、咲夜がこうした性的な世界の最中 に用いてくるのは初めてのことで。 霊夢がやんわりと咎めるようにそう口にすると、咲夜は優しく微笑んでみせる。 「どちらかといえば、縛るより縛られる方が好きね」 「そうなんだ……?」 それなら次に愛し合うその時には、霊夢からも同じだけの仕返しをしてあげたいと思えた。
書き上がりましたら後編を掲載すると同時に、たぶん夜伽話に投稿すると思います。……最近、めっきり離れてしまっておりますががが。
実際に書いてみると霊咲もなかなか面白いなぁ……と思いました。咲夜を書いたこと自体がほとんど無いも同然でしたので、なかなか新鮮な気持ちです。