昨日日記が書けなかったので、たまには原稿の抜粋を。

「……そう。ところで、ひとつだけ、訊いても?」
「うん?」
 ベッドに押し倒される格好のまま、パチュリーは訊ねる。
「どうして、その……こんな回りくどいことを? 私の気持ちを訊くだけなら、初めからそう言えばいいのに」
 こんな風に、賭けで衣服を奪って、さらには嘘や黙秘権を奪うようなことまでしなくても、と思う。
「ああ、それはね……」
「それは?」
「えっと……実は私、リトルから、あなたの気持ちを聞いていたの」
 アリスの思いがけない告白に、パチュリーは戸惑う。
「リトルから? どんな風に?」
「その……パチュリーが私のことを、好きだってことを」
「――なっ!?」
 あとでリトルはお仕置きに決定――パチュリーは心に決める。
「怒るなら、ほどほどにしてあげてね。そのおかげで私、あなたに告白することができたのだから」
「確かに……それはそうね。半日の説教だけで、勘弁してあげるわ」
「は、半日って……」
 アリスは苦笑してみせる。
「……でも、それなら。あらかじめ私の本心を知っていたのなら、なおさらのこと初めからそう訊けばよかった
のではない? 『――あなた、私のことが好きなんじゃないの?』って」
 パチュリーがそう訊くと、くすっとアリスは笑ってみせる。
「じゃあ、私がそう訊いたとして――パチュリーは正直に、うん、って頷いてくれたのかしら?」
「………………ごめんなさい、絶対に無理だわ」
「でしょう?」
 くすくすと、アリスが小さく笑う。
 確かに――そんな風に真正面から言われたとしても、私は恥ずかしくなるばかりで、きっとパニックに陥りな
がらも拒絶してしまっていたことだろう。
「それでね、どうしたらいいか、リトルに相談したの」
「……そうなんだ」
「ええ。そうしたらリトルがね、『パチュリー様は恥ずかしがりやのくせに無駄にプライドだけは高いですから、
正攻法では無理です。賭け事か何かで負かせて、逃げ場を奪ってしまえばいいんですよ』って教えてくれたの」
(――あとでリトルの奴は、お尻百叩きに決定)
 心の中で、説教から折檻に格上げする。
 実際……リトルの戦略はこうして現に成功しているだけに悔しい。確かに私は恥ずかしがりやだし、プライド
だけは高いから。こんな風に状況で追い詰められなければなかなか本心を吐露することはできないだろう。
「そうそう、他にも面白いことを言っていたわよ?」
「……どんなことを?」
「えっとね……『あとパチュリー様は、あんな風に無感情を装っていて実はマゾですから。アリスさんが徹底的
に虐めてあげるぐらいのほうが、逆に喜ぶと思いますよ』って言ってたかな?」
「……」
(――あとでリトルの奴は、裸にひん剥いて性的拷問に大決定)
 心の中で、さらに折檻から拷問に格上げする。
 アリスがまるでパチュリーの心を見透かしたかのように「ほ、ほどほどにね……?」と小さく口にした。
「……でもリトルの言うこと、間違ってはいないんじゃない?」
「まさか……あなたまで、私がマゾとでも言うつもりじゃないでしょうね」
「違うの?」
「違うわよ……」
「……ふぅん?」
 アリスが、ニッと妖艶に笑む。
「ねえ、パチュリー。『正直に答えて』ね?」
「う」
「あなた、虐められるのとか、本当は好きなんじゃない?」
「ううぅ……。……す、好きよ……」
 言わされてしまう。リトルの指摘通りに、プライドだけは高いパチュリーだから。
 賭けとはいえ、負けた以上誓約は絶対のもので。だからパチュリーには、嘘をつくことなんてできない。
「ね、本当はさっきからずっと、早く虐めて欲しくて仕方ないんでしょう?」
「…………は、い…………」
「うん、よく言えました」
 それはパチュリーの本心だった。
 全裸で、最愛の人に押し倒されるような格好で。これで、心が逸らない筈などどうしてあるだろう。
 私の体は随分前から、ただ愛しい指先に触れるその時を、ずっと待ち侘び続けているのだった。
「じゃあ、泣いても許さないんだからね?」
「ええ……そのほうが、私も嬉しい……」
 もう、アリスに強制するまでもなく、素直な言葉がパチュリーの咽をついて出る。
 そんな状況に流されている自分が、少しだけ許せない気持ちにもなるのだけれど。
「素直なパチュリーも、私は嫌いじゃないわよ?」
 アリスがそう言ってくれるならいいか、と思ってしまうあたりが。
 やっぱり、どうにも私は重症らしかった。

というわけで、ただのえろほんです!゜+.c⌒っ.д.)っ゜+.゜