次回の本の内容が概ね固まってきましたので、ご案内だけ。
夏コミでは「アリス×紫」本を予定しております。表紙・挿絵はありがたいことに今回も きゆきゅん(゚∀゚) にお願いさせて頂けることになりました。お話としては純愛モノ長編の予定で、アリス視点と紫視点を章ごとに交えながら書くつもりです。純愛モノですので、「アリス×紫」とは書いていても特にアリス攻めというわけではないです。
本のタイトルは「逢酒の席」「紫のアリス」「冬の隙間に」辺りのどれかにしようかと。一つ目は「逢坂の関」に掛けてで、二つ目は同名のミステリ小説に掛けたものですが。紫のお話は書きたい書きたいとは常々思いながらも、書けば分量が凄いことになりそうでなかなか手を出せずにいたキャラなので、少し気合が入ります。ページ数は……あんまりお値段がキツい額になっても申し訳ないので、なんとか60-100ぐらいに抑えたいとは思っておりますががが。

 ――気づかないうちに、随分と風が冷たくなった気がする。
 お酒の力で体が温まってきたせいかもしれない。まだ冬を想うには少し早い時節とも思うのに、グラスに半分
入った赤褐色を片手に遊びながら、ふとした拍子にアリスはそんなことを想った。
 僅かにでも冬の気配を感じてしまうと、その後が怖い。冷たい色を纏い始めた冬ならではの風は、一日ごとに
確かな形で厳しさを増していくものだから、こんな風に兆しを感じるようになったならもう本格的な冬の訪れが
目の前にまで来ていると考えても間違いではない。……sれが幻想郷に来てから実際に幾つかの冬を経てみて、
アリスが学んだ経験則に基づく真理だった。
(次からは宴席の誘いがあっても断るようにしないと)
 ちびちびとグラスを傾けながら、半ば戒めのように自分の心に言い聞かせる。
 本来なら、今回の宴会にだって参加するつもりなんてアリスには無かったのだ。ただ、ここ数ヶ月の間は何度
となく魔理沙から宴会への誘いを受けていたにも拘らず、それらの招待全てをむげに断っていた負い目なんかも
あったものだから。今回ばかりは……どうしても、断るに断れなかったのだ。
 けれど、これからは確実に寒い季節が来る。
 冬が嫌いなわけではない。じめじめと無駄に熱い夏に比べれば、遥かに好きな季節と言ってもいい。
 それでも、冷たい空気の中で飲むには。――ひとりでは、寒すぎるのだ。
 誘われてもたまにしか足を運ぶことのない宴席は、来るたびごとに随分とその人数を増えたようにアリスには
思えた。参加するたびごとに見ない顔が増えていって、それでもアリスが会話する相手は増えることがなくて。
 アリスが会話することのできる数少ない友人である魔理沙霊夢は、そうしたアリスの知らないどんな人たち
にも人気があって。……だからこそ、参加する人数が増えれば増えるほど、相対的にアリスが会話できる機会は
失われていくばかりでしかなかった。
 未だに私のことを、当然のことように魔理沙霊夢が毎回誘ってくれるのは、純粋に嬉しいことだと思う。
 それでも……宴席のざわめきさえ、どこか遠めいてしか聞こえないアリスには。これからの日々冷たくなって
いく幻想の世界の中で、こうした時間を孤独のまま過ごすことに、耐えられる自信がないのだった。


「隣、いいかしら?」
 そんなアリスだから。
 突然すぐ傍で掛けられたその声さえ、自分に向けられたものだとは、一瞬判らなかった。

こんな感じで始まるお話を予定しております。